角ばったノーズから立ち上がるリトラクタブルヘッドライト。コックピットを彩るエレクトロニック・ディスプレイメーター。そして、長く伸びたボンネットの下に収まる直列6気筒エンジン。 トヨタ セリカXX(ダブルエックス)。2代目A60型は、80年代という「日本が最も元気だった時代」を象徴するスーパーグランツーリスモです。
現代のスープラ(A90)の源流でありながら、その直線基調のスタイリングは、今の車にはない鋭利な美しさを放っています。 かつて『よろしくメカドック』を読んで胸を焦がした少年たちも、今や社会的地位を確立し、再びこの車を求めて動き出しています。
結論から申し上げます。セリカXXは今、「ネオクラシックカー」の代表格として再評価され、相場は安定した上昇トレンドにあります。特に上位グレードのMT車は、タマ数の減少により「言い値」での取引が始まっています。
本記事では、2025年時点でのセリカXXの市場価値と、今後の展望を詳細に分析します。あなたのガレージで眠るその車は、単なる旧車ではなく、失われた時代を取り戻すための「タイムマシン」としての価値を持っているのです。
・80年代ブームと北米需要(スープラMk2)により価格が高騰中
・「2800GT」「2000GTツインカム24」のMT車は特に希少価値が高い
・部品供給が厳しいため、不動車や部品取り車でも高値がつく可能性がある
トヨタ セリカXX(A60)とは?歴史とスペックの魅力
引用元:ig-model.com
セリカXXがなぜ、これほどまでに愛され続けるのか。それは、トヨタが「世界に通用するスポーツカー」を本気で目指し始めた、その夜明け前の熱気が詰まっているからです。
開発背景:スープラへと続く「北米戦略」の布石
1981年に登場した2代目セリカXX(A60型)は、ラグジュアリークーペであった初代とは決別し、本格的なスポーツ路線へと舵を切りました。 北米では「スープラ(Supra)」の名で販売されたこの車は、ロータス・カーズが足回りのチューニングに関与したとも噂されるほど(実際はトヨタ主導ですが)、ハンドリング性能を磨き上げました。 直線番長ではない、曲がれるGTカー。その完成度は当時の国産車の中で頭一つ抜けており、初代ソアラと共にトヨタの黄金期を築き上げたのです。
スペック詳細:DOHCと電子制御の幕開け
トップグレードには、2.8リッター直列6気筒DOHCエンジン「5M-GEU」を搭載。 後期型からは、2.0リッターながら軽快な吹け上がりを見せる「1G-GEU(ツインカム24)」も追加されました。
エンジン形式: 水冷直列6気筒DOHC(5M-GEU / 1G-GEU)
総排気量: 2,759cc / 1,988cc
最高出力: 170ps(5M) / 160ps(1G)
トランスミッション: 5速MT / 4速AT
特徴的装備: 8ウェイ・スポーツシート、デジタルメーター
「ドロドロ」と低い音を奏でるトルクフルな5Mか、高回転まで「クォーン」と鳴く1Gか。どちらのエンジンも、現代のダウンサイジングターボでは絶対に味わえない、濃密な内燃機関のフィーリングを持っています。
セリカXXの価格推移グラフと最新相場
それでは、市場価値の分析に移ります。以下は、国内オートオークションおよび旧車専門店におけるセリカXX(A60型)の平均取引価格推移です。
直近5年の価格推移(データ分析)
| 年 | 平均相場(万円) | 最安値〜最高値(万円) |
|---|---|---|
| 2020年 | 150 | 60 〜 250 |
| 2021年 | 210 | 100 〜 320 |
| 2022年 | 280 | 120 〜 450 |
| 2023年 | 330 | 150 〜 550 |
| 2024年 | 380 | 180 〜 650 |
| 2025年(現在) | 420 | 250 〜 800+ |
A80スープラのような爆発的な急騰ではありませんが、着実に右肩上がりを続けています。特筆すべきは「底値」の上昇です。かつては数十万円で転がっていた個体が姿を消し、現在では乗り出し可能な状態であれば300万円〜400万円の予算が必要となっています。
なぜここまで高騰したのか?
要因の一つは、世界的な「80年代カルチャー(Vaporwave/Cyberpunk)」のリバイバルです。 角張ったデザイン(ウェッジシェイプ)やデジタルメーターは、若い世代にとって「レトロフューチャーでクール」な存在として映っています。 また、北米における「Mk2 Supra」としての人気も根強く、日本の良質なXXが逆輸入の形で海外へ流出していることも、国内相場を押し上げる原因となっています。
2030年までの未来予測|バブルは崩壊するか?
セリカXXの未来はどうなるのでしょうか。専門家の視点は「希少価値による高止まり」です。
専門家の見解とシナリオ
A80スープラやGT-Rと異なり、セリカXXの最大の問題は「部品の枯渇」です。外装パネルやレンズ類、内装パーツの入手は極めて困難になってきています。 そのため、今後は「維持できる個体」と「土に還る個体」の選別が加速します。
しかし、だからこそ「完動品」の価値は天井知らずになります。 トヨタのヘリテージ活動の対象になる可能性も含め、2030年には、フルオリジナルの極上車は1000万円クラスのコレクターズアイテムとして定着するシナリオが有力です。
状態ランク別の買取相場(松竹梅)
セリカXXは、コンディションによって価格差が激しいのが特徴です。
- 【松】タイムカプセル級(500万〜800万円+) 2800GTまたは2000GTツインカム24。純正5速MT、屋根保管、ダッシュボード割れなし、純正アルミホイール装着。特に赤×黒や白の純正カラーは評価が高いです。博物館に展示できるレベルです。
- 【竹】ドライバーズコンディション(300万〜450万円) 年式相応のやれはあるが、機関良好でエアコンも効く状態。社外マフラーやホイールが入っていても、当時の定番(ロンシャン、ハヤシなど)であればプラス査定の対象となります。
- 【梅】レストアベース/部品取り(100万〜200万円) エンジン不動、錆多数。しかし、捨ててはいけません。XXは「部品」が宝です。リトラモーター、フェンダー、テールレンズが生きていれば、専門店は喉から手が出るほど欲しがります。
セリカXXを一番高く売るための戦略
この年式の車を売却する際、最も危険なのが「近所の中古車屋」や「ディーラー」への持ち込みです。
ディーラー下取りは「数十万円」損をする
ディーラーの査定ブックには、40年前の車の適正価格など載っていません。「古くて部品もない車」として、解体費を請求されないだけマシ、といった扱いを受けることさえあります。 しかし、その車には市場で数百万円の価値があるのです。このギャップを知らずに手放すことは、資産をドブに捨てるのと同じです。
「A60」の価値がわかる専門店へ
セリカXXを高く売るには、「旧車専門店」や「マニア向け車両を得意とする買取店」にアプローチする必要があります。 彼らは「純正デジパネが動くこと」の凄さを知っています。「前期型と後期型のバンパーの違い」を理解しています。その知識があるからこそ、愛着に見合った金額を提示できるのです。
▼ 旧車・ネオクラシックカーに乗っているなら「CTN」一択
「CTN」の一括査定には、旧車やスポーツカーを専門とするトップバイヤーが多数参加しています。 一般的な買取店では評価不能な「昭和の改造車」や「部品取り車」であっても、ここではお宝です。複数の専門店が競り合うことで、あなたのセリカXXの本来の価値(=最高値)が炙り出されます。
トヨタ セリカXXの価格推移まとめ
セリカXXは、日本の自動車史における「青春の1ページ」です。 その価値は、単なる鉄の塊としての価格を超え、当時の空気感や思い出を含んだプライスレスなものです。だからこそ、手放す時はその価値を真に理解してくれる相手に託すべきです。 まずは現状の相場を確認し、あなたの愛車がどれほどの「宝物」なのか、数字で実感してみてください。
※価格情報に関する免責事項
本記事の相場データおよび将来予測は、執筆時点での市場調査に基づく編集部の独自見解です。実際の買取価格や将来の価値を保証するものではありません。売買の判断は自己責任で行ってください。