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定規で引いたような直線だけで構成された、実直そのもののデザイン。 昨今の車が競い合うような流麗なラインも、威圧的なグリルも、ここにはありません。 あるのは「安全」と「実用」を極限まで突き詰めた結果生まれた、機能美の塊。 ボルボ240、愛称「フライング・ブリック(空飛ぶレンガ)」。
1993年の生産終了から30年以上が経過した2025年。 この「ただの四角いワゴン」が、なぜこれほどまでに現代人の心を捉え、一部のスーパーカーオーナーさえもがセカンドカーとして指名買いするのでしょうか。 それは、デジタルに疲れた私たちが無意識に求めている「アナログな温もり」と「絶対的な安心感」が、この車には宿っているからです。
長年連れ添ったオーナー様であれば、その頑丈さに何度も助けられた経験があるでしょう。 しかし、市場の急騰を目の当たりにし、ふと考えることはありませんか? 「走行距離は20万kmを超えた。あちこちガタもきている。価値がついている今のうちに手放すべきか、それとも一生添い遂げるべきか?」
結論から申し上げます。ボルボ240は現在、単なる中古車から「ライフスタイル・アイコン」へと昇華し、相場は過去最高値を更新し続けています。
本記事では、世界中で再評価が進むボルボ240の最新市場データと、2030年に向けた資産価値のシナリオを冷徹に分析します。あなたの愛車が、実は現代の高級SUV以上の「豊かさ」と「資産価値」を秘めている可能性について、深く掘り下げていきましょう。
この記事のポイント
・「安くて丈夫」な時代は終了。良質な240は300万円〜400万円台のゾーンへ
・特に「エステート(ワゴン)」と最終限定車「クラシック/タック」は高評価
・過走行でも値段がつく稀有な車。ディーラー下取りは厳禁、専門店へ。
ボルボ240とは?歴史とスペックの魅力
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引用元:ボルボ公式サイト
価格の分析に入る前に、なぜ240がこれほど愛されるのか、その背景を整理しましょう。スペック上の数値では語れない「信頼」こそが、この車の資産価値です。
開発背景:安全神話の確立
1974年にデビューした240シリーズは、約19年間という異例の長期間にわたり生産され続けました。 その設計思想は極めてシンプル。「乗員を絶対に守る」。 前後に長く伸びたバンパーとクラッシャブルゾーンは、当時の安全基準を遥かに超えるものであり、米国NHTSA(運輸省道路交通安全局)が安全基準のベンチマーク(模範)として採用したほどです。
モデル末期には、より近代的な740や940が登場していましたが、世界中のファンが「四角い240」を求め続け、結果として後継モデルと併売される異例の事態となりました。 「新しさ」よりも「変わらないこと」に価値がある。240は、消費社会に対するアンチテーゼとして、今なお輝きを放っています。
スペック詳細:地球を何周でもできるエンジン
心臓部に搭載されるのは、名機中の名機「レッドブロック」ことB230型エンジン(およびその前身)。 鋳鉄製のシリンダーブロックは極めて頑丈で、適切なメンテナンスさえ行えば50万km、100万kmと走り続けることが可能です。
エンジン形式: 水冷直列4気筒 OHC(B230Fなど)
排気量: 2,316cc
最高出力: 115ps / 5,400rpm
ボディサイズ: 全長4,785×全幅1,715×全高1,435mm(エステート)
スペックは平凡ですが、低回転から粘り強く回るトルク特性と、驚くほど小回りの利くハンドリング(FRレイアウトのおかげです)は、日本の狭い道路事情でも驚くほど扱いやすいのです。
ボルボ240の価格推移グラフと最新相場
それでは、市場の「数字」を見ていきましょう。 かつては「100万円以下で買えるお洒落なワゴン」でしたが、その認識は改めてください。以下は、ボルボ240(特に人気のエステート)の取引価格推移です。
直近5年の価格推移(データ分析)
| 年 | 平均相場(万円) | 最安値〜最高値 |
|---|---|---|
| 2020年 | 150 | 80 〜 250 |
| 2021年 | 190 | 100 〜 300 |
| 2022年 | 230 | 120 〜 380 |
| 2023年 | 280 | 150 〜 450 |
| 2024年 | 320 | 180 〜 500 |
| 2025年(現在) | 350 | 200 〜 600+ |
※上記はエステート(ワゴン)を中心とした相場です。セダンはエステートより若干安価ですが、近年「セダン回帰」の流れで上昇傾向にあります。
驚異的なのは、生産終了から30年経ってなお、価格が右肩上がりである点です。特に最終限定車の「Classic(クラシック)」や「TACK(タック)」、そして丸目ライトの旧年式モデルは、新車時の価格を超えるケースも珍しくありません。
なぜここまで高騰したのか?
最大の要因は、「ライフスタイル・アイコンとしての定着」です。 サーファー、キャンパー、クリエイター。感度の高い人々が「自分のスタイルを表現する車」として240を選び始めました。InstagramなどのSNSで「#volvo240」が拡散され、世界的なトレンドとなっています。
また、構造がシンプルでDIYでも整備しやすい点が、近年の「自ら手を動かす暮らし」を志向する層に刺さっています。 「便利すぎる現代車への疲れ」が、不便だが愛おしい240への回帰を生み、需要が供給を遥かに上回っているのです。
2030年までの未来予測|バブルは崩壊するか?
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「流行り廃りがあるのではないか?」 そう懸念される方もいるでしょう。しかし、240の人気は一過性のブームを超えています。
専門家の見解とシナリオ
ボルボ・カーズ自身が「Volvo Heritage」として過去の遺産を大切にしており、主要な消耗部品は今でも新品が入手可能です(ボルボ・クラシック・パーツ)。 この「維持のしやすさ」は、旧車投資において最強の武器です。
2030年に向けては、内燃機関車への風当たりが強まる一方で、「サステナブルな選択(古いものを大切に使い続ける)」として240の価値観が再評価されるでしょう。 もはや単なる中古車ではなく、イームズのチェアやライカのカメラのような「時代を超えた名品」としての地位を確立するため、価値が暴落するリスクは極めて低いと予測されます。
状態ランク別の買取相場(松竹梅)
240の査定は「走行距離」よりも「内装の状態」と「整備履歴」が重視されます。
- 【松】ヘリテージ・コンディション(350〜500万円以上) 最終型(93年式)のクラシックまたはタック。走行10万km以下。純正塗装が維持され、ダッシュボード割れがなく、内装ベージュレザーが綺麗な個体。これは「奇跡」です。
- 【竹】デイリー・ドライバー(200〜300万円) 走行15万〜20万km。機関良好でエアコンも効く。オールペン済みや、コロナホイール等の定番カスタム車もここに含まれます。最も流通が多いゾーンです。
- 【梅】レストアベース(100〜180万円) 走行25万km超、塗装のクリア剥げ(パティーナ)、内装樹脂パーツの欠損あり。しかし、頑丈な240は「ベース車両」としての需要が高く、不動車でない限り廃車価格にはなりません。
重要なのは、「20万kmは通過点」という認識です。 日本車なら廃車にされる距離でも、ボルボの世界では「慣らし運転が終わった頃」と冗談交じりに言われます。距離を理由に安く買い叩こうとする業者には注意が必要です。
「ボロい」ではなく「味がある」。そのヤレ感をプラスに評価できるのは、専門店だけです。
ボルボ240を一番高く売るための戦略
もし売却を検討されているなら、売り先を間違えないでください。
ディーラー下取りは「数十万円」損をする
最新のボルボディーラーであっても、30年前の車の価値を正しく査定するのは困難です。 彼らのシステムでは「年式不明・査定ゼロ」とはじき出されることが多く、良くて数万円〜10万円程度の下取り額提示で終わります。彼らにとって240は、ショールームに飾るには良いが、再販するにはリスクの高い車でしかないのです。
「240」の価値がわかる専門店へ
ボルボ240には、全国に熱狂的な専門店が存在します。 彼らは「スモールウィンドウの価値」「純正ホイールキャップの有無」「整備記録簿の重み」を熟知しています。 また、昨今の円安を受けて海外バイヤーも日本の良質な240を狙っています。
「まだ手放す決心がつかない」 それでも構いません。愛車の「現在の資産価値」を知ることは、維持していくモチベーションにも繋がります。
▼ 輸入車・旧車に乗っているなら「外車バトン」
240のようなネオクラシックカーを得意とするバイヤーが直接入札するため、一般的な買取店とは桁違いの熱量で査定が行われます。
ボルボ240の価格推移まとめ
ボルボ240は、効率とスピードを追い求めた現代社会において、私たちが忘れかけていた「心のゆとり」を思い出させてくれる稀有な存在です。 その価値は、スペックシートには決して現れません。
迷っているなら、まずは現状の価値を把握してください。 あなたの愛車は、あなたが思っている以上に、多くの人から「憧れの対象」として見られています。
※価格情報に関する免責事項
本記事の相場データおよび将来予測は、執筆時点での市場調査に基づく編集部の独自見解です。実際の買取価格や将来の価値を保証するものではありません。売買の判断は自己責任で行ってください。